5月29日、第5回講義のレポートです。
今回も数多くの学生が来ていました。Twitter上でも様々な意見や感想がMP_NICHIGEI宛てに届き始めたようで、学生の興味も回を増すごとに高まっているようです。
そして相変わらず、加藤先生は講義の紹介で緊張されていました。あのスタイルを貫いていってほしいものです。
第5回は株式会社ミュージック・オン・ティーヴィ ソリューションビジネスグループソリューション営業部からお越しいただいた深川裕介先生です。現在は映画業界を中心に企画立案、プロモーションを手掛けているそうです。とても熱い、心のこもった講義をしてくださいました。講義内容が今まで以上に具体的で、事例をいくつか挙げていただいいたので学生たちも想像がしやすかったのではないでしょうか。
さらに今回は久々にUstreamで配信されました。講義に直接参加していない方からもリアルタイムで質問されていて、それを質疑応答の時間に取り上げて解決するという活発なコミュニケーションにも成功していました。
今回の講義のテーマは「キカクでつなぐ」。「CS音楽メディアでの取り組み」を軸に、「深川先生のプロフィール、仕事内容」「キカクについて」「事例説明」など、様々な映像を用いて説明をしてくださいました。講義の際の図や映像によって、よりリアルな情報として受け止めることができました。
最初に深川先生の経歴、CS放送について、ミュージック・オン・ティーヴィさんについて主にご説明いただきました。経歴では現在勤めている会社に至る経緯を中心に自らのこだわりについて話してくださいました。CS放送の説明で興味深かった言葉は「立場としてはテレビ局よりも雑誌に近い」です。民放のテレビ局の番組は誰でも視聴することができますが、CSの放送局の番組は基本的に有料。見たいと思う番組に対してお金を払って見るという行為は、雑誌を買う行為に似ているということでした。ミュージック・オン・ティーヴィさんの説明では映像を見ました。24時間放送されていて、自らの局が主催するイベントがあり、WEBやモバイルなどの多メディア化にも対応しているとのこと。ここで気になった言葉は「ミュージック・オン・ティーヴィは音楽業界から生まれたメディア」です。これはわかりやすいクロスメディアの形ではないでしょうか。前回、前々回と学んだ芸能業界やBeeTVの展開に似たものを感じました。
次に、深川先生の会社でのお仕事について話してくださいました。ミュージック・オン・ティーヴィさんは音楽、映画、新規事業を主に仕事としていますが深川先生は主に映画関係の営業をされているそうです。そしてさらに局で放送されている一つの番組のプロデューサーも兼任されています。とても忙しいそうですが、後に話してくださった事例説明の時にはとても活き活きとされていました。質疑応答の際に学生から忙しさについて尋ねられると「自分がしたいことをしているから苦じゃない」とおっしゃっていました。やりがいを感じて仕事されていることが伝わってきました。
営業では「メディアの広告代理店化」とおっしゃる通り自ら企画を考えて、クライアントに積極的に提案されているそうです。その際のこだわりやポイントもいくつも紹介してくださいました。クロスメディアという考え方は毎回の講義で強く意識していますが、そもそもクロスメディアを考える前にまずコンセプトとなる「キカク」が大切。「キカク」を考えることが先で、そのコンセプトを実現するために最適なメディアを探し、必要があれば伝える仕組みを組み合わせることがクロスメディアではないか。この考え方は大切だと思います。
プロデューサーという業務を「イメージ(企画)を形にすること(目的)に対して責任を持つ人」と説明してくださいました。企画の目的、成果物に対しての責任と何に対しての責任なのかということを常に考えてそれらをつなぐ人のことではないかとのこと。とてもリアルな話で、学生たちは考えさせられたのではないでしょうか。
最後に深川先生が提案した事例を3つ紹介していただきました。事例はそれぞれ特殊でわくわくするような仕掛けがたくさんありました。
映画「ハイスクールミュージカル」のプロモーションでは映画で実際に踊られていたダンスの振付レッスンDVD(なんと日藝江古田校舎内で撮影!)を2万枚配布して、ジャパンプレミアで出演者が来日した際に、そこに居合わせた観客全員が踊り出すということにつながったそうです。
映画「Disney’s クリスマス・キャロル」のプロモーションでは「世界一早いクリスマスツリー」ということで夏の神奈川県鎌倉市由比ガ浜の砂浜に群馬県から持ってきたもみの木を植えて名所を出現させたり、秋には、日本一早いクリスマス・ライブとしてアーティストがクリスマスソングを歌うライブイベントをしたり、様々な方法で映画を盛り上げました。
最近の事例で現在公開中の映画「アリス・イン・ワンダーランド」のプロモーションでは原作アリスを大好きなロリータの子達をターゲットにしたお茶会イベントを主催し、さらに本映画の日本での宣伝舞台裏を取材したドキュメンタリー番組を全国33局で放送したそうです。
事例を改めて考えてみると、どれもぶっ飛んだアイデアが盛りだくさんで一見単に派手な演出のみのプロモーションにも思えますが、どのプロモーションもきちんと論理ができていて、さらに結果も残していることは素晴らしいと思いました。
最後に学生たちへのアドバイスをいただき、質疑応答に入りました。いつもと同じように様々な質問が飛び交い、良い時間を過ごすことができたように感じます。
学生たちへのアドバイスで「今の自分は20代の頃と根本的には何も変わっていない」とおっしゃったあと、「物怖じせず外に出ていく、外で表現する大切さ」を提言してくださいました。日藝生が自分のやりたいことを再確認し、その考えを深めて意識をもっと外に向けることができれば、さらに良い発展を望むことができるのかもしれません。
——本日のまとめ
・株式会社ミュージック・オン・ティーヴィという会社
1998年に設立されたCS放送での音楽専門チャンネル。24時間番組を放送し、主な収入は視聴料と広告料。WEBやモバイル、イベント企画など多メディア化。
・企画の3つのポイント
1.枠にとらわれず、でも実現を考える
自信を持ち、自分の考えを口に出す。理想から現実へとバランスをとる。そして自分なりの成長を目指す
2.「心のこもったおもてなし」という精神
エンタテイメントは究極のサービス業であると捉えている。受け取る側にどんな感情を残したいのかを大切にして考えていきたい。
3.「キカク」の目的は成果を120%出すこと
この仕事は、キカクの目的に対する結果でしか判断されない厳しい世界。100%の結果を残すことは当然で、残りの20%をいかに上乗せすることができるかが大事。
その20%がオリジナリティになる。