クロスメディアマネージメント

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テレビ朝日メディアプレックス・日本大学藝術学部産学協同総合講座

REPORT:授業レポート

第6回6月5日(土) メディアの変革 〜モバイル・ファーストウィンドウ〜
富所佐知子(株式会社ソニー・デジタル エンタテインメント・サービス)
 ライター 日本大学藝術学部文芸学科4年 栗原 雅貴

 6月5日、第6回講義のレポートです。

 今回も空席はほぼありませんでした。講義終了後にはたくさんの学生が先生に質問をしたり、名刺交換をさせていただいたりしていました。講義内容だけにとどまらず、さらに何かを吸収したいという欲が顕著に表れてきているのかも知れません。
 今回の加藤先生はあまり緊張していないようでした。残念です。講義中に「水ではなくコーラが欲しかった」と先生がおっしゃると、すぐに買いに行くという余裕をも見せつけました。流石です。

 第6回は株式会社ソニー・デジタルエンタテインメントのマーケティング部からお越しいただいた、富所佐知子先生です。富所先生は絵画や音楽をアメリカの大学で勉強されていたこともあり、芸術の知識も豊富な方でした。好奇心旺盛な先生は妖怪に大変興味があるそうで、その熱意は妖怪検定を受けるほど。日藝に通っていてもおかしくないほど、日藝生らしい一面もあるようでした。

 

 講義テーマは「メディアの変革」。自己紹介や業務、事例紹介をしつつも、今までのメディアの歴史を振り返りながら「昆虫世代」と呼ばれる今の若者とその社会が未来どのようになっていくかを考える講義でした。前回よりは包括的な内容でしたが、富所先生のプレゼン力とポイントをきちんと踏まえた講義は学生を飽きさせませんでした。
 最初に富所先生ご自身の経歴を紹介してくださいました。中学生の頃に映画鑑賞で英語を覚えた富所先生は、高校でアメリカ留学を決意し、大学もアメリカで芸術(絵画と楽器)を専攻していました。今まで来ていただいた先生の皆さんは海外経験が豊富なことが共通しているようです。海外での経験が物事を多方向から見る目を養い、その結果クロスメディアに関連する職業に就く。とても興味深い共通点であるとともに、視野を広く持つことの重要性を物語っているような気がします。
 富所先生はその後、外資系のIT企業に就職されるのですが9・11の同時多発テロの影響を受け会社が倒産。大学院でビジネスを学び、株式会社ソニー・ピクチャーズエンタテインメントジャパンに就職。2007年から現在勤めている会社に移籍したそうです。ここで興味深かったことは富所先生がビジネスを学ぶために大学院に進学されたこと。「エンタメの世界にいたいならいろんな視点で物事を見ることが大事」とのお言葉にもあるように、ビジネスの勉強をしたことがなかった富所先生は、自ら必要だと感じたビジネスを学ぶことを選択されたのです。エンタメ業界を志望する学生にとってビジネス感覚は大切ということは毎回の講義で実感する共通点ですね。
 次に会社紹介ではソニー・デジタルエンタテインメントさんが手がけているケータイコンテンツの映像を見ました。NISSAN「NOTE」のCMでお馴染みの「低燃費少女ハイジ」やCM「きのこの山」のキャラクター「きの山さん」、SAITONEの「Thriller」PV、アニメ「デュラララ!!」OPです。どれも一度見たら忘れないような強烈なキャラクターでした。オリジナル作品をプロデュースし、「この世に一点の価値」を大切にしながらワンソースをマルチユースするソニー・デジタルエンタテインメントさんは、いち早くケータイ小説をプロデュースも含めて手掛け、去年から開始した出版ビジネスでは第13回文化庁メディア芸術祭で入賞した実績もあるそうです。運営する140のケータイサイトでは月間3500万PVを達成するという実績も素晴らしいと思いました。ソニー・デジタルエンタテインメントさんの情報の説明で興味深かったことはケータイで発信するコンテンツがアニメやマンガ、アートやノベルなど様々なものを取り扱っていることです。クロスメディアであることを感じ、さらにWEBがクロスメディアにもたらした可能性、役割、影響の大きさを再確認しました。

 そしてここから講義ではメディアの歴史を振り返り、今を分析します。メディアの歴史では主に音楽、出版、映像について振り返りました。メディア全体の変遷を理解するキーワードとして「局地的(コミュニティ化)、大量消費(パッケージ化)、双方向(ブロードバンド化)」と3つを挙げてくださいました。車などの移動手段がない時代では流行や情報も自分の住んでいたコミュニティが色濃く反映されていて、そこから移動手段の発達とコピー技術の発達により大量消費の時代が来ました。そして現在はブロードバンド化が進みインタラクティブのコミュニケーション時代となっています。それぞれの歴史をキーワードと交えて振り返っていくと全体像がとてもクリアに見えてきました。それらを踏まえて今の時代を考えてみると、体験や経験は「リアルからバーチャル」に変化してきたことがよくわかります。そして同時に変わらない普遍的な部分もわかってきます。テクノロジーやメディアが変化しても愛されるテーマは普遍、つまり流行を追う作品も時代を超えたテーマが必須ということです。この考え方を再認識することは学生にとって必要なことだと思います。流行を追うことも大切ですが、根底にあるテーマを考えるとそこには普遍的な何かがあるのかもしれません。
 ここで社会とメディアの話に入ります。社会とメディアが変わると新しい文化が生まれるという言葉が表わすように様々な文化が生まれてきました。今の時代を考えると、多メディア化により自分で自由に使うことのできる時間が多い人がリッチとされて、メディアを扱う層の低年齢化によりパーソナル化が進行しているとのこと。1950年から今までを3つの世代に分ける言葉として「お産婆さん世代、無菌室ベイビー世代、昆虫世代」を挙げていました。それぞれのネーミングにはそれぞれ意味があり、時代背景をユーモラスに言い当てていたように思います。
 最後に講義のまとめとして、バーチャルの中でリアル・ライブ感を再発見することが起こり、それが大切になっていくのではないかと富所先生はおっしゃっていました。WEBを通して世界に触れるのなら、今以上に人への思いやりやコミュニケーションが大切になっていくことは当然で、そうすることによってネット上ではないリアルの世界でも良い反応が見られるのではないか。そしてそのことがまた新しい文化を作っていく、とおっしゃっていたようでした。
温故知新、古きを知り新しきを学ぶことの重要性に気付いた講義でした。


——本日のまとめ

ソニー・デジタルエンタテインメントという会社
新しく、ライブ感のあるオリジナル作品をプロデュースするクリエイティブハウス。デジタル発で書籍、映像などをコンテンツとして持ち、それらをマルチユースしていく。ケータイ小説の先駆けでもあり、NHK大河ドラマ「天地人」のケータイコミックがヒットしコミック化。去年から出版ビジネスにも取り組み初出版が文化庁メディア芸術祭2010で受賞。従業員数50名。Twitterアカウント @Sony_Digital

お産婆さん世代、無菌室ベイビー世代、昆虫世代
お産婆さん世代とは1950年代頃。専業主婦の考えが強く、外に出る夫や父親が情報源であり、テレビもまだ一家に1台ほどあったわけではなかった世代。産まれた赤ちゃんはお産婆さんが受け取り育てる=人と人との結びつきが強固なものであった時代。
無菌室ベイビー世代とは1970年代以降。OLや大学生が情報発信源であり、テレビは部屋に1台あるようになった世代。無菌室で産まれる=生まれた時から一人という考え方。お産婆さん世代と比べて人との距離が離れた時代。
昆虫世代とは2000年以降。情報発信源は高校生やティーン。内田勝氏の論文を参考としている。昆虫のように複眼(伝達スピードの速さ、情報の鮮度を優先)であり、甲羅(防御壁=逃げることのできる個室)をもっている。自分の安心できる世界をもっていてオタク社会、電脳社会という言葉にもそれらが表れている。

 

 

受講した学生さんから授業後のアンケートや口頭での質問、Twitter等で意見、感想、質問を募集しました。そのたくさんのコメントの中から、一部抜粋して掲載します。
◆放送学科Tさん(アンケートより)
自分には自信がありません。...「ものを知らない」ということに負い目を感じていました。でも知らないことこそチャンスなのではないかということを、トミーさんの講義を聴いて思いました。
◆音楽学科Sさん(アンケートより)

私も今フルートを専攻しているのですが、すごく親近感がわきました。... これからいろんな人との関わりを大切にしたいと思いました。

◆デザイン学科Tさん(アンケートより)
私達の世代は昆虫世代だというお話がありましたが、とても納得できる表現だと思いました。ただ今の日本の若者のほとんどが、本当に世界規模でメディアの活用や地球全体のことについて行動を起こしているかというと、そうではないと思います。テクノロジーが進んで環境が整っても、それを活用する人間がもっとを視野を広げて世界とコミュニケーションをとる気持ちを持たなければいけないと思いました。
◆映画学科Tさん(アンケートより)
私はクレイアニメーションを制作していますので、就職と制作について今後もう一度違う目線で自分を見つめ直そうと思います。とてもおもしろかったです。
敬称略

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