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テレビ朝日メディアプレックス・日本大学藝術学部産学協同総合講座

REPORT:授業レポート

第10回7月3日(土) 現代メディアでデザインが担うべき事〜デジタルとアナログの狭間で〜
茂出木龍太(TWOTONE INC.代表取締役/アートディレクター カンヌ国際芸術祭CyberLion受賞)
 ライター 日本大学藝術学部文芸学科4年 栗原 雅貴

 7月3日、第10回講義のレポートです。

 今回の講義もたくさんの学生が来ていました。この講座は人が少なかったことがないですね。毎回の講義を学生も楽しんでいるようです。加藤先生は以前の講義ほど緊張しなくなっているようです。流石です。

 第10回講義はTWOTONE INC.代表取締役アートディレクター茂出木龍太先生にお越しいただきました。茂出木先生は日本大学藝術学部デザイン学科卒業生で、現在同学部同学科の非常勤講師として授業とゼミも担当されています。学生が興味を持つような、聴きたいと思わせるような講義内容でした。

 今回は「現代メディアでデザインが担うべき事—デジタルとアナログの狭間で—」という講義。当初の予定では「インタラクティブデザインの現場から—現代メディアでデザインが担うべき事—」というテーマで講義を予定していたものを前回6月26日のカヤック柳澤大輔先生の講義中に、柳澤先生が学生に「自分のことをデジタル人間と思っていますか?アナログ人間だと思っていますか?」とどちらかに挙手するよう学生に問いかけたところ、圧倒的に自分をアナログ人間だと思う学生が多かったという結果を見て急遽内容を変更されたそうです。茂出木先生の大学時代のお話から講義は始まり、デジタルでもアナログでも変わらないもの、茂出木先生が手がけた実際の作品、その作品が完成するまでの試行錯誤していた段階の作品(モック)と講義は進んでいきました。加藤先生が「WEBに対してのキヅキを得てほしい」と前回、今回、次回とお呼びいただいた豪華な先生の方々から学生はたくさんの「キヅキ」をしているのではないでしょうか。

 

 

 茂出木先生が日藝に在籍していたころはそもそもWEBやインタラクティブの授業は無く、デジタルは各々でやっておけよ、という感じがしていたそうです。ゼミではイラストレーションの勉強をしていた茂出木先生が初めてWEBを意識したのは大学2年でMTV USAを見たとき。そこで発信されているものを見て「発信できるってすごい!」と思ったそうです。筆を使ってデザインをした際にできる筆のかすれなどが大好きだった茂出木先生は、表現するということが好きという視点から、徐々にデジタルに魅了されていったとおっしゃっていました。
 アナログとデジタルというものを自分の中でどのように考えているかを説明するのは難しい、と予めおっしゃった上で茂出木先生が考えるデジタルとアナログについての話に入っていきます。デジタルとアナログについて考えていくとクロスメディアってデジタルなのか?インタラクティブコンテンツはデジタルなのか?それではメールとはデジタルか?そもそも自分たちはメールをデジタルだと思って使っているのか?など、そこには様々な疑問がすぐに思い浮かぶことでしょう。しかし、その二つの共通点を考えると見えてくるものがあるそうです。それは「受け手は変わらない。人。」ということ。「早く、気軽に、何度も」想いを伝えるため誰もが自由に使える場所、それがインターネットであるとおっしゃっていました。デジタルとアナログというのはあくまで手段であり、その根底にあるものは変わらないと考えてみると、ともすると寂しく感じることもあるインターネットでも、誰かと実際に会って話す時に感じる温もりのようなものを感じていられるような気がします。



 そしてここからは茂出木先生が手がけた実際の作品をご紹介されていきます。完成形になる前のモックもご紹介していただきました。Sony Walkman「Play You.」シリーズ、BEAMSオフィシャルサイト、BEAMS ARTSと説明されていく中で大切なキーワードが二つありました。
 まず「何度も作る」というもの。これは脳内にあるものを想像で終わらせずに、制作してみて自分のアイデアを目で見て確かめるという行為を繰り返すことで、想像と異なる部分を見つけて改善していくということだそうです。具体的にはWEBコンテンツを製作する際に数多くのモックを制作し、イメージを確認していくといったことです。これは想いを伝えるために必要なことだと茂出木先生はおっしゃいます。デザイナーには、そのようにして確かめ、検証する責任があるともおっしゃっていました。その表現が正しいのか、面白いのか、何より伝わるのか。そこに一切の妥協を許さない姿勢は素晴らしいと感じました。


 もう一つのキーワードは「リアリティ」です。特にSony Walkman「Play You.」シリーズの作品についてご説明されていた際に頻出していた言葉でした。この作品は主なターゲットとして中高生を中心においたキャンペーンで、新垣結衣さんと中高生約3000人がプロモーションビデオとCMを制作するために合唱するものや、Aqua Timezと部活生たちが協力してひとつの歌をつくるというもの、そして最新のものとして「Play You House」という場所でアーティストのたまごたちがUstreamを利用してライブを配信するというものです。それらのキャンペーンをWEB上で展開していったそうです。ポイントとして脚色を全くしていないということが挙げられるとのこと。そのリアリティが心を打つのでしょう。それらのキャンペーンのWEB制作で「WEBが何かを残していく場になっていく」ということを考えた茂出木先生は、WEB上で誰でも参加できることはもちろん、合唱や一緒に作った曲をライブする機会を設けて体験できるような仕組みにしていったそうです。もちろんそこに至るまでに数多くのモックを制作したということは言うまでもありません。実際にご説明いただいた作品は、中高生らしいといえるような熱のこもった言葉や表情を見ることができて、素直に感動できるようなものでした。

 最後に学生たちに茂出木先生の考えるWEBのあり方、デジタルとアナログの捉え方をお話しされていました。講義終了後には質疑応答に移りました。そこで興味深かった質問として「WEBとITの違いとは?」というものがありました。茂出木先生は「ITとは技術のひとつで、WEBとは「場」や「ページ」を含めた「ハコ」のようなもの。なので「WEBをつくるのがITです」といえるのではないでしょうか」とお答えされていました。学生のみなさんは「ハコ」と聴いてどのような事を考えたでしょうか。人それぞれ解釈はあるとしても、とても深い表現であると思いました。



【会社紹介】
TWOTONE INC.
2010年5月に設立された602 inc.発のデザインスタジオ。つくること、デザインすることに責任と自負を持ったデザイナー集団であること、多くのデザイナーが育つ場となることを目指し、活動開始。(一部抜粋 URL: http://www.twotone.jp/



受講した学生さんから授業後のアンケートや口頭での質問、Twitter等で意見、感想、質問を募集しました。そのたくさんのコメントの中から、一部抜粋して掲載します。
◆放送学科Mさん(アンケートより)
webってすごいですね!私たちは8学科に分かれて勉強しているけれど、それを全部合わせた様な感じです。本当に総合芸術っていうかんじ。日芸は8つで1つなんて言ってるわりに、個人プレーだから(笑)
◆デザイン学科Sさん(アンケートより)
茂出木先生は、想いや心、コミュニケーションをとても大切にしているんだなと、先生の作品や講義から伝わってきました。「アナログ」という言葉をそうした「気持ち」としてとらえられてるのかなーと。「デジタル」はそれを伝えるツールの1つなのだけど、「アナログ」と「デジタル」は話して考えられないなーと、新たな発見がありました。
◆音楽学科Kさん(アンケートより)
最初にお話であった「メールはデジタルなのか?」という問いでなんだかハッとさせられました。ネット上を飛び交うだけで文章を送ることができるけど、文章を考えるのも、読むのも人間だと思うと、一概にデジタルは言えないし、そもそもデジタルってなんだろうって思わされてしまいました。
◆文芸学科Nさん(アンケートより)
伝達において大切なのは「気持ちのリアルさ」であるとともに、そのためには思いつきの即応性も大切なのだと感じました。特に文芸なので、考え込むことが染み付いているというか、そこの強みと弱みを見つめ直したいと思います。
◆放送学科Tさん(アンケートより)

つながりや協力、力を合わせたときの力強さというものが、いかに大事なものなのか。webという全国、世界をつなげることができるツールが、こんなに大きな成果を生むことができるとは思っていませんでした。

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