
AIを駆使して新時代のクリエイティブに挑戦する実験バラエティ番組。 毎週水曜深夜0:15~放送中。

テレビ朝日メディアプレックスには、日々進化を続ける生成AIを武器に多岐にわたるフィールドで活躍しているメンバーがいます。
「AIは一緒に働くパートナー」と語る彼が、これまでに乗り越えてきた試行錯誤のプロセスと、クオリティへのこだわり、そして技術の先に見据える「人の心を動かすクリエイティブ」への想いに迫りました。
【プロフィール】

所属:デジタルマーケティング事業本部 ビジネスディベロップメントディビジョン AIクリエイティブチーム
バラエティ番組、ドラマの背景制作、企業向け動画制作などを担当しながら、AIクリエイターとして活躍中。
※ 肩書・所属部署・内容はインタビュー掲載時点のものです。
番組・ドラマ・企業提案まで――「AIクリエイティブスタジオ」の常駐クリエイターが担う3つの軸
――Y・Gさんは現在、どのようなお仕事をしているのですか?

現在、テレビ朝日の「AIクリエイティブスタジオ」という部門に常駐しています。その中で、僕の仕事には3つの軸があります。
バラエティ番組『AI大作戦』の企画動画制作
番組内で活用する動画制作を中心に、番組制作のサポートをしています。
ドラマでのAI背景の制作
撮影すると膨大なコストがかかるシーンを、AIで代用して制作するお手伝いをしています。
企業様へのデモ映像の作成
外部の企業様との企画提案のための、AIを使ったデモ映像を作っています。
――想像以上に幅広いジャンルに携わっているのですね。それぞれのジャンルでどのようなことを意識していますか?
バラエティの場合は、制作する動画が30秒から1分程度と短いことが多いので、「視聴者の方に分かりやすく伝わること」を何よりも大事にしています。 ドラマの場合は、監督やプロデューサーが実現したいカメラワークや設定を汲み取り、「AIっぽさ(歪みやミニチュア感、時代背景に合わない映り込みなど)」を消して、現実の映像と矛盾なく馴染ませるために試行錯誤しています。
そして、企業提案のデモ動画では、クライアントがアピールしたい強みと、AIだからこそ実現できる表現を掛け合わせて、より魅力が伝わるものを話し合いながら形にしていきます。
――実際の動画は、どのように制作していくのですか?
バラエティの例でお話しすると、僕の場合はまず、自分で台本(構成)をすべて作り、全体の流れを絵コンテに起こした上で、カット割りごとに動画を生成しています。短い動画だからこそ、視聴者が「これ、どういうこと?」と疑問を抱いたまま終わってしまうのが一番良くない。オチや見せたいポイントを明確にし、「1本の動画として完全に自己完結し、理解できる構成」を心がけています。
特に、テレビに出すものなので、クオリティの高いコンテンツを届けるということは意識していますね。そのためにも、「分かりやすさ」「伝えたいコンセプト」「AIを使う意味」は、動画を制作する上で常に考えているポイントです。
生成AIは一筋縄ではいかない「ガチャ」だからこそ必要な徹底したチューニング
――制作の中で大変なことはありますか?
日々、試行錯誤の連続です(笑)。AIでの生成自体が思い通りにいかないことも日常茶飯事ですし、「この表現では伝わりにくいな」と、作っていく中で気づく課題もたくさんあります。
AIならではの難しさでいうと、例えば、複雑なカメラワークに対応しきれなかったり、キャラクターに喋らせるだけのつもりが勝手な言葉を付け足してしまったり、座る動作の途中で机をすり抜けてしまったり、時代設定が昔なのに勝手に現代のオブジェクトが生成されてしまったり…など、挙げていったらキリがないですね。そんな矛盾をどのように調整するかが大変です。 
――どのようにして、狙ったイメージに近づけていくのでしょう。
いきなり動画を生成するのではなく、まずはベースとなる静止画をたくさん作り、質感や世界観をある程度固めてから動画にするので、まずは画像作りから試行錯誤します。ただ、動画にしたらしたで「あ、余計な物体が入っちゃったな」ということもあるので、そこからはもうずっと、試行錯誤の繰り返しですね。プロンプトの精度を上げる意味では、日本語よりも英語のほうがAIに理解されやすいので、英語に翻訳して入力し直す工夫もします。
生成AIというのは、結局は「ガチャ」なんで(笑)。何回か同じプロンプトで試して、まあ10回試して無理だったら「プロンプトが悪いんだな」と切り替えたり、5回くらい試して「これだったら矛盾がないな」というものを選んだり。一発でできることは、まあないですね。
同時に、構成の面白さを追求するため、「フリ」と「オチ」を意識しています。そのためにも、「セリフ」や「演出」、「構成」などをちょっとずつ微調整していったりもしますね。 あとは、僕がやりたいことがちゃんと伝わるか、同僚にも意見を聞いたり、反応を見たりしてチューニングを重ねていきます。
徹底した「事前のすり合わせ」と、脳内を映像化する「想像力」
――どの業務も、相手の意向を汲み取る「ヒアリング力」や「調整力」が重要になりそうですね。要望を形にする上で、難しさを感じることはありませんか?
僕の場合、いただいた情報を一度頭の中でイメージして「脳内で先に映像を作ってしまう」ようにしています。それをAIで再現していくんです。
もちろん、自分の脳内イメージとディレクターさんの意図がズレてしまっては意味がないので、「事前のすり合わせ」は徹底しています。作る前に確認し、テキストや仕様書などは形として残す。ふわっとしたまま進めて、後から「やっぱりここを直して」となると、動画生成は一箇所直すだけで全直しになるリスクがあるので。
――現場での経験を重ねる中で、ご自身の中で鍛えられたと感じるスキルはありますか?
即座に対応する「瞬発力」は大事です。あとは…「想像力」ですかね。
番組の収録現場では、その場で言われたオーダーに対して即座に映像化しなければいけない場面があります。AIクリエイティブだからこそ、現実の撮影だと表現ができないようなぶっ飛んだ映像のオーダーが出てきたり。
現実では撮れないような設定を、頭の中でどう映像として組み立て、AIを使って具現化するか。色々な人の脳内を再現する想像力はかなり鍛えられたと思います。
アイデアや構成は絶対に「人間の頭」で考える。AIは「一緒に働く」パートナー

――Y・Gさんにとって、「AIクリエイター」とはどのような仕事だと思いますか?
昨今、「AIに作らせているだけなのに、クリエイターと名乗っていいのか」という議論はありますし、自分自身「クリエイターです」と大手を振って名乗る気はあまりないんです。
ただ、僕が思うAIクリエイターとは「AIと協力して、一つの作品を作る仕事」をする人。
すべてをAIに丸投げするのではなく、「0→1」のアイデアや台本は絶対に人間の頭で考える。「こういうのを作りたい」や「どうしたら伝わるか」を考えるのは、人間の作業だと思うから。そこからAIと何度もキャッチボールをしながら、アップデートを重ねていく。人間の手がしっかり入るからこそ、作品としてのクオリティが担保できると思っています。
――今のレベルに到達するまで、どんな努力をされたのですか?
とにかく自分は「考え抜こう」と。最初のうちは映像的な技術で戦うことはできないから、とにかく考えて、いろんなパターンの動画を作ってみようと思って、空いている時間はもうずっと動画を作っていました。実写、アニメ、クレイ(粘土)など、いろんな表現で試してみたりして。それに、なんか過去作った作品と同じような表現の仕方はしたくないとも思っていて。自分自身の二番煎じにならないよう、いろんなテーマで考えることにこだわっています。
とにかく数を考えて、形にしてみる。それができるのが、やっぱりAIの良さだと思うので。トライアンドエラーを繰り返していくうちに、肌感覚でAIの得意・不得意がわかるようになってきた、というのはありますね。
ーー数をこなしてきたからこそ、見えてきたものがある、と?
はい。AIのできること・できないことは、やっぱり本当にやってみないとわからないので。AIの技術の進歩も早いので、新しいモデルが出たらすぐに触ってみて、常にたくさん作って試しまくっている状態ですね。
だからこそ、少しずつ自分自身の表現の幅が広がっていっているのかな、という気がします。
※権利上の都合により、音声(BGM)をカットしています。
「頑張れば、誰かの心に届く」ー人の心を動かした、老人ホームでの反響
――これまで関わってきた中で、特に印象に残っているエピソードを教えてください。
『AI大作戦』の企画で、老人ホームにお邪魔して、そこにいる方々の思い出の写真を動かす『動き出せ青春』というプロジェクトに参加したことです。
モノクロ写真をカラーにして、若い頃のご夫婦が仲睦まじく喋っているシーンを作ったのですが、それを見たご本人が、すごく感動されて涙を流してくださったんです。
真摯に向き合って作った結果、自分の作った映像で「人の心を動かせた」ことを実感できました。目の前の人が喜んでくれたり、スタジオの一流の芸人さんたちが自分の動画を見てリアクションを取ってくれた時は、本当に嬉しかったです。
「頑張れば、それだけ何かに繋がるんだ」と、自分の時間を削ってでもやりたいと思える、大きなモチベーションになっています。
――今後、挑戦したいことはありますか?
映像の構成を考えたりアイデアを出したりするのは好きなのですが、テレビ局のプロが作るダイナミックな映像と比べると、僕の「映像知識(光の当て方、カメラワークなど)」はまだまだだなと。現実では再現できない、時代を飛び越えた映像などAIだからこそ作成できる壮大で美しい映像、圧倒的なクオリティの映像を、自分の手で作れるようになりたいです。
「AIでもここまで心が動く、素晴らしい作品が作れるんだ」ということを、さらに大きな舞台で見てもらえるように、これからも考え続けながら、たくさんの作品を作り続けていきたいです。
Y・Gさんが番組制作に携わっているテレビ朝日『AI大作戦』の番組はこちら!