7月17日、第12回の最終講義のレポートです。
クロスメディアマネージメント最後の講義ということもあり、数多くの学生たちが集まっていました。加藤先生は講義直前「糖が足りない」とおっしゃってチョコレートを摂取していました。流石です。
第12回はこの講座のプログラムマネージャーをしてくださっていたテレビ朝日メディアプレックス ディレクター加藤亮介先生より、講座全体の総括をしていただきました。今回の講義を数に入れずに考えると全11回分の講義が行われ、6月19日実施の「REAL討論会」を除くと総勢10人の講師を招聘したこの講座。この講座が今回このような運びになった理由、そしてこの講座実現への情熱を加藤先生はご説明されていました。さらに、あまり明かされていなかった加藤先生ご自身の経歴もご紹介されていました。「来年も講座やります」と力強くおっしゃっていた加藤先生。来年もこの講座があるとすれば、たくさんの学生が参加することになるでしょう。
講義は大きく分けて2部構成で、講義の最後には業務連絡として産学連携企画を実施する報告もありました。講義後の産学連携企画の説明では、具体的にまだ何も決まっていないものの「日藝の放送スタジオを使うかも」「番組配信をするかも」「今回の講座に参加してくださった企業さんと何かをするかも」など意味深長の発言がありました。こちらも注目ですね。
「我々はやりたかった事を実現したんです」という加藤先生のお言葉が冒頭にありました。そして重要なキーワードとして「0→1にした講座」を講義の初めに挙げていました。それらを説明すべく講義が始まります。
そもそも、クロスメディアマネージメントで伝えたかったことは「あらゆるメディアで変革が起こっていて、その時代のうねりのようなものを体感してほしい。そしてそこから学生は何かを学び取ってほしい」ということ。決して単にその言葉の定義や仕組みを伝えたかったわけではない、と加藤先生はおっしゃっていました。その伝えたかったことに基づいて、この講座に必要である講師を厳選して招聘したともおっしゃっていました。つまり、今回お越しいただいた講師の方たちの共通項は「時代のうねりに立ち向かっている人」であったということです。様々なビジネスがあり、それらの根幹にはそれぞれ揺るがないものがあった。しかし、その根幹が揺らぐ時代となった今、その中で何をすべきか、どうすればいいのかと考え、実行して立ち向かっている方たちを招聘した。換言すれば今、それぞれの現場の最先端で「体感」している方たちを講座にお呼びしたということ。今、学生に必要なのはこのような講師であり、それらの方々のお話を聴くことのできる講座が日藝には必要である、という考えからこの講座を今年度開講したと加藤先生はおっしゃっていました。
そこから講師の方たちがどのようなことをお話しされていたかを振り返っていきます。
第2回はテレビ朝日コンテンツビジネスセンター所属プロデューサー 長谷川主水先生が「旧テレビビジネスの衰退とテレビ局の新ビジネスについて」をお話しされていました。テレビの今を知る上でとても貴重なお話でした。
第3回はエイベックス・グループ・ホールディングス株式会社事業管理本部 新規事業プロジェクト管理部長 日比野雅史先生から「音楽レーベルの映像モバイルビジネスへの挑戦」についてでした。Bee TVという携帯上の放送局についてもおっしゃっていました。主にビジネスの観点からお話しいただきました。
第4回は株式会社アミューズ ライツマネージメント部ライツマネージメント室専任プロジェクトマネージャー 大和由紀子先生に「タレントプロダクションのバーチャルタレントビジネス」についてお話しいただきました。アメリカの映画会社に「雇ってください」と片っ端から送ったというお話は学生たちの刺激になったに違いありません。バーチャルタレントの「京おんな」も絶好調ですね。さらに、この講義でコンテンツの様々な権利について知る事の重要性を学生に説いていただきました。
第5回の株式会社ミュージック・オン・ティーヴィ ソリューションビジネスグループソリューション営業部 深川裕介先生からは「CS局の業態の限界を企画力で越えている」という内容でした。ご自身が手掛けたイベントや広告手法、またそこに至るまでのプロセスだけでなく、企画するということのポイントも教えていただきました。
第6回は株式会社ソニー・デジタルエンタテインメント マーケティング部 富所佐知子先生が「古き良きコンテンツのデジタルリユース」についてお話しいただきました。メディアの歴史を振り返りながら、今の自分たちのメディアへの関わり方を考えさせられました。ここでも権利のお話が印象的でしたが、ビジネス視点で考えることの大切さも感じたはずです。
第7回はワシントン州立大学メディア経営学部教授、金沢工大虎ノ門大学院コンテンツ&テクノロジー融合研究会所長 北谷賢司先生と、二人目の方はカリフォルニア州立大学エンタテイメント経営研究所所長 ロバート・グスタフソン先生のお二人から「ハリウッドの衰退とデジタルシネマの可能性」についてお話しいただきました。学生たちは世界基準の広い視野で流行や動向を追うことの必要性を強く認識させられたのではないでしょうか。
第8回はREAL討論会でした。この回については後に触れます。
第9回は面白法人カヤック代表取締役社長 柳澤大輔先生に「とにかく新しい技術と発想をサービス化するスピード」について自社コンテンツを主に例としてお話しいただきました。おもしろいコンテンツや会社での取り組みばかりに気をとられがちですが、確固とした企業理念のもと実行されていることも印象に残りました。第9回、10回、11回にかけてWEBやITと呼ばれている分野の最先端でご活躍されている講師の方たちにお越しいただきました。この回でWEBについて興味をもった学生も多くいるようです。また、第9回の講義からデジタルとアナログというものは何なのか、という話題も活発に取り扱われていました。
第10回はTWOTONE INC.代表取締役アートディレクター茂出木龍太先生に「ウェブはツールではなく総合的表現の箱」というお話をしていただきました。第9回でWEBに興味をもった学生にはもちろん、そうでない学生にも刺激になった講義でした。貴重なモックも数多く見せていただきました。デジタルでもアナログでも「受け手は変わらない。人。」という茂出木先生のお言葉に何か感じるものがあった学生もいたようです。
第11回は株式会社paperboy&co.取締役副社長 吉田健吾先生が「一般制作者が世界に表現できるような世界」についてお話しされていました。WEBについて興味をもった、でも何から始めよう、と考えていた学生にとってはペパボさんが提供している様々なサービスがとても魅力的に思えたはずです。
講師の方たち一人ひとり、講義一つ一つを振り返った加藤先生のお話を聴いて日藝生はどのようなことを考えたのでしょうか。前回の講義で学生に配布された講座を振り返るアンケートを集計した結果、「WEBって使えるよね。良いよね」「思っていたら動かないとだめだよね」「とにかく人とのつながりが大事」という3つの意見が多かったそうです。それらを残りの学生生活でこの気づきをどのように活かしていくかはとても大切ですね。
講義は6月19日の第8回講義REAL討論会について移ります。Ustreamで六本木での討論を生中継して、Twitterで意見を発するというスタイルで行われたこの講義、賛否両論がスパっと分かれたとのこと。パブリックビューイングとして江古田校舎で見ていた学生からの意見は厳しく、個人のPCやiPhoneなどの端末から見ていた学生からは楽しめたという類の感想が多かったそうです。初めての取り組みで内容は未熟ではあった、と認めつつもそれ以上に「このタイミングでこういうことをすること」の大切さを感じてほしかったと加藤先生は力を込めて説明されていました。 WEBで事前に発表されていた第8回の講義情報をきちんと確認したのか。講義で取り扱っていたUstreamとTwitterについて理解していたのか。この2点、つまり情報を取りに行く力とサービスを使いこなす力をこの回の講義を通じて学生に気づいて欲しかったそうです。また、この講義がきっかけかどうかは知らないけれども、学生の中でUstreamを使用した人、使用して何かしたいと思う人がいたことは嬉しいと加藤先生はおっしゃっていました。気になった人は積極的に活用していくといいかもしれません。
そして講義は第2部に入ります。2部は「人生の実現のために」というタイトルで加藤先生がご自身の人生を第11回講義で吉田先生も使用していたNENPYOというサービスを使ってご説明していきます。まず、スクリーンに映し出されたのは今までお越しいただいた講師の方たちのお言葉。「想いは強く持ち続けろ」「会社を利用する」「とにかく動くこと」「繰り返し続ける」「何をするより誰とするか」といったものが並びます。加藤先生が選んだものであり、これらのお言葉に関わるような形で加藤先生の経歴を、年表(URL: http://nenpyo.org/ryoan55)を用いて説明していただきました。中学生時代に憧れを抱いたMTVに25歳の3月に入社するまで、様々な活動をしていた加藤先生。同年9月、ずっと心の中で考えていた「人の人生に直接的に関わりたい」という夢を達成する一つの方法として大学教育に興味をもつ。27歳にMTVを退社し、テレビ朝日メディアプレックスに入社。そして29歳の今年からこのような講座を開始した、という経歴を映像や事実も使い、面白おかしくお話ししつつもその時々に感じた想いをきちんとご説明されていました。映像では様々なアーティストの取材時の映像にさらりと映りこみ、高速道路で車から白煙が出た経験をした直後ネットで検索すると一番上にそのことについての記事が出てくるなどオーバーヒート界で1位を獲得されたこともお話しされていました。
加藤先生が最後におっしゃったお言葉は「出会いはチャンス」ということ。加藤先生はご自身の夢や目標を誰かと出会い、知り合うことで達成していったことがとても多いのだそうです。「みなさんも今回の出会いを大切に」とおっしゃって講義が終わりました。学生たちからの大きな拍手が加藤先生のメディアパワーを物語っているようでした。
最後に業務連絡と木村先生からの一言がありました。加藤先生と下山先生と一緒にプログラムマネージャーとして携わった木村先生からは「学生たちに勘違いしてほしくない」というお言葉。「大学とはそもそも学ぶところであり、社会の事を学ぶのはもちろん良いことだけれども、それが全てではない。今回の講義で学生が得たものの一つは「学ぶということに向かうということ」であり、上手く区別することが大切。大学で何をするかを考えるきっかけを下さった加藤先生をはじめ携わっていただいた皆さんに感謝します」とおっしゃっていました。
この講座で得た気づきを大切に大学で何をすべきかをもう一度考え、実行していけばより充実した学生生活をおくる事ができるでしょう。